| 1. おすすめ度 ★★★★★
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その口から発せられる言葉の意味を思わず考えてしまう野球人の数は少ない。現役選手ではイチローが数少ない一人だが、インタビューを見ていると、彼は簡単に説明できることをわざわざ難しくかつ遠回しに説明するので息苦しさみたいなものを感じてしまう。そんなイチローの対極に存在するのが落合博満なのだと思う。
彼の口から発せられる単語は簡単だ。センテンスも簡潔で“表面的な”意味はすぐに理解できる。しかし、その発言を改めて考えてみると、物事(野球)の本質を突いていることに気付かされる。スポーツライターと呼ばれる人達以外の作家がイチローの言葉をあまり取り上げないのはそこに理由があるような気がする。
元巨人ファンでありかつ現役長嶋信者でもある詩人兼作家の著者が、野球人落合の野球感だけではなく、彼の発する言葉に惹かれるのは当然なのだろう。
この本は、江夏豊、赤瀬川原平、豊田泰光、富士真奈美、高橋春男と著者の対談の章、そして、数々の落合語録を著者の視点で解説した章という構成になっている。落合語録の解説が非常におもしろかった。語録をまとめて読むと、「哲学的ではない哲学」というおかしな言葉が頭に浮かんできた。
著者は長嶋信者ではあるが、まだ落合に対してはファンである。信者になるまでは至っていない。しかしこれからも信者にはならないだろう。落合博満に信者になることを許さない雰囲気やオーラが漂っているからだ。ファンにはなれるかもしれないが信者になるまでのめり込めない。それが落合博満だと思う。
対談の人選も含め、この本は中日あるいは落合ファン向けではないという指摘があるが、それが逆にこの本のおもしろさを表すことになっている。しかも、著者はスポーツライターではなく言葉を操る詩人だ。純粋な野球ファンの側面も持っているだろうが、そんな人物が単純な落合賛歌的な一冊を書くはずがない。
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| 2. おすすめ度 ★★☆☆☆
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私は中日ファンであり、落合ファンである。恐らく中日ファンか落合ファンでなければ、この本を読もうとは思わないだろう。その意味でいまいち趣旨が分からない本である。
前半は著者が、江夏豊、赤瀬川原平、豊田泰光、富士眞奈美/高橋春男と対談。対談者の選定基準は、落合に詳しいというよりも、著者と親しいという要素を強く感じる。そして、何故か長嶋茂雄の偉大さとの比較を中心に話が進む。確かに長嶋は巨人ファンにとっては「記憶の人」として偉大かも知れないが、中日ファンにとってはもっと記憶に残る中日の選手がたくさんいる。また、多くの落合ファンは、長嶋よりも記録で勝る(また経歴も飛びぬけてユニークな)落合の方が遥かに偉大だと信じているのではないだろうか。従って、長嶋が偉大だと思っている著者が一生懸命、長嶋と落合を比較しようとしても、どうも私の意識とかみ合わない。同じ「記録の人」である王やイチローとの比較だったらまだ分かるが…。
後半は著者が「詩人」としての立場から落合語録を解釈する。こちらは落合ファンも楽しめる。やはり長嶋の話もからんでくるものの、一般に無愛想だとされる落合の言葉が、詩人の手によって解釈され膨らみを持つと実は味わい深いんだ、という流れが落合ファンの心をくすぐる。
後半だけならまだ良かったが、どうも前半の「長嶋は絶対だ」的な前提が中日ファンかつ落合ファンからすると不満である。
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| 3. おすすめ度 ★★★★★
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プロの世界で大成した人の才能は、東大を出て社会的に大成する以上に厳しい認識眼の持主である。その典型をプロ野球に事例をもとめて書かれた一冊ともいえる落合博満論。著者のねじめは元は巨人ファンで、長島茂雄ファンにして詩人。そして本書の主人公落合も長島ファンである。戦後日本プロ野球史上最高の英雄を尊敬することで、詩人と落合は野球世界を共有し、求心力となって落合野球哲学を描き出す。それも詩人お得意の言葉に仮託した議論が秀逸。落合の舌足らずな言説を、行動と対照させながら、分析し、裏に隠れた真意を暴き出す、見事な分析である。
日本のプロ野球を崩壊させた張本人は巨人軍オナーであり、これを果敢に食い止めようとしているのは落合と中日ドラゴンズ・オナーの白井だ、と歴史的視点で分析するなど、野球愛に満ちた分析は並み居るスポーツ・ライターには書けない名言。非暴力主義者で、冷徹な野球哲学者落合との見事な協奏曲が、ここにはある。その脇を固める江夏、豊田と野球の哲人が見事なソロを奏でた1冊。スポーツ世界の豊かさを改めて認識させる。是非お楽しみ下さい。
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| 4. おすすめ度 ★★☆☆☆
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おもしろかったのは豊田泰光さんとの対談です。あまり普段耳にしない話が聞けます。しかしねじめ正一とは話が噛み合ってみません。それがおもしろい。野村監督がよく引き合いに出されますが、長島主義者のねじめさんは当然否定的です。野村監督のことはあまり良く知らないようです。情報としても落合の話は誰でもよく知っている話ばかり。唯一、富士真奈美さんの話がチラット出てくるのみ。落合博満の研究というので、いろいろな情報をいろいろな角度から分析し論じていいるのではなく、長島主義者の立場から、落合の印象を述べて、結局長島バンザイで終わりました。読売ジャイアンツが好きな人はいいんじゃないですか? 中日ドラゴンズファンは参考になりません。長島茂雄に捧げるポエムのような本でした。
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